どこにいても耳にするメロディーの数々。現在では、メロディーから逃げることが困難な状況が当たり前になっています。
至る所にメロディーがあふれかえっている現在でも、発掘された粘土板に当時のメロディーが残されていたというニュースには、興味をひかれます。おそらく太古の時代には特別な存在であったと思われるメロディーとは?
世界最古のメロディー、それは案外ポップなもの
現在確認されている最も古いメロディー(旋律)は、シリアで出土した約3400年前に製作された粘土板にくさび形文字で刻まれていたものです。
これは当時メソポタミアに暮らし、ミタンニ王国を建国したフリル人の言語によって書かれています。この最古のメロディー、すでに解読して復元したものがシンセサイザーによって演奏され音源化。
インターネット上で、復元された最古のメロディーを聴くことが可能です。現在使用されている楽譜の様式で残されたものではありませんから、その解釈は分かれるようです。
少なくとも「全音階」で作成されたメロディーであるという点を研究者は主張しています。全音階とは、1オクターブを5つの全音と2つの半音で表現する音階であり、現在でも一般的に利用されています。この復元されたメロディーを実際に聴いた人からは「ポップなメロディー」であるという評価も出ているようです。
メソポタミアでは、約3400年前の賛美歌以外にも
発見された粘土板に刻まれた内容から、儀式用の賛美歌であることが判明したメソポタミアでの発見。それ以外にも、メソポタミアで発見されたさらに古い約4000年前の粘土板からは、当時の演奏方法が確認できるそうです。
解読結果によると、やはり全音階で、三度のハーモニーで構成される演奏に付いて書かれているようです。
当時の一般的な弦楽器であったと思われる「ライアー」のチューニング法に関する指示も確認できるこの粘土板。現在なら、楽器演奏の入門書として本屋さんに置いてある類のものでしょうか?
さらに同じ地域で出土した粘土板には、楽譜の記載方法に関して書かれた部分があり、9本の弦とそれぞれの音程について言及しているとのことです。この楽譜は、9本の弦それぞれに番号が振り分けられたものであり、二ヶ国語で記載されています。1929年には、この時代に製作されたと思われる楽器も発見されました。
見つかった3つの楽器は、ライアーと呼ばれる弦楽器の仲間であるといわれています。残念ながら、完全に復元するまでには至らなかったようです。
最古のメロディーからはじまる世界
古代文明が栄えたメソポタミアの地で、早くから音楽が重要な存在であったことは間違いないでしょう。
発見された粘土板に刻まれたメロディーは、おそらく特別な行事でのみ奏でられていたものであり、一部の特権階級の人でなければ聴くことさえできなかったのかも知れません。
粘土板に残すほど重要なメロディー以外にも、庶民の間で伝承されていた音楽が存在していた可能性は高いと思われます。ただし粘土板に残すというような方法ではなく、頭のなかに刷り込むしか伝える術がなかったため、いつの間にか失われたのでしょう。
そう考えて、もう一度復元された賛美歌を聴くと、さらに味わいが深くなりそうです。