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作曲家と演奏家がそれぞれの仕事にエネルギーを集中させ、全体としての完成度を上げる方法。

最も効率的と思えるこのような制作方法から、いつの間にか非効率なはずの方法へ主流が変わりました。

それがシンガーソングライターと呼ばれる多数のアーティストの登場です。商業的な音楽作品とは異なる特徴を持つ彼らの作品は、その後の音楽業界では主流となる可能性を秘めたものでした。

シンガーソングライターの誕生

自ら歌う曲の作詞・作曲を行うポピュラーミュージックのアーティストを「シンガーソングライター」と呼びます。

もともとは1970年代の初めに米国アーティストのジェームズ・テイラー・キャロル・キング・英国のエルトン・ジョンあたりを表現する言葉として生まれたようです。

誕生して当分の間は、演奏と作曲を分業化していたポップ・ミュージックの世界。演奏と作曲の分業制(=通称オールディーズ、日本では歌謡曲)から、自作自演の流れを作ったのが1959年に亡くなったバディ・ホリーや彼の影響を受けたビートルズなどのロックバンドでした。

ところが1970年代になって初めてシンガーソングライターという呼び名が使われるようになったのはなぜでしょう?

シンガーソングライターによる変革

すでに巨大なビジネスとなり、歌詞も含めて音楽自体が大掛かりなものとなっていた当時のポピュラーミュージック。

それに対して、身の回りで起こる出来事や自分の内面的な問題を題材にしているという特徴を強調する目的があったようです。一見するとロックスターらしくないアーティストが、実は非凡な音楽を奏でるという意外性が、商業主義に染まっていないひとつのジャンルとして、当時の音楽ファンには新鮮だったのかも知れません。

日本では吉田拓郎が大きな人気を獲得した1972年あたりから、シンガーソングライターという呼び名が使われるようになったようです。

彼と小室等・井上陽水・泉谷しげるの4人でフォーライフレコードを設立した時期(1975年)には、全レコード売り上げの実に4割がシンガーソングライター系の作品でした。

評論家などは一過性のブームであると考えていたようですが、その後も才能あふれる多数のシンガーソングライターの登場によって、現在でも途絶えない大きな流れとなりました。

シンガーソングライターの可能性

インターネットの発達によって、シンガーソングライターに大きなチャンスが巡ってきているのが現状。あいだに音楽事務所や制作会社を入れることなく、直接アーティストとファンが接触できる理想的な環境です。特に新しい音楽ジャンルの確立を目指しているアーティストには、喜ばしいものです。

それは、少ない費用で音楽配信という新しいスタイルの販売方法を選択できるからです。

このような環境によって、自由な創作活動をさらに進める効果が期待できます。今後も新たな流行が、自作自演のアーティストによって生み出されると思います。

それは商業的な面からすると、少し時代を先取りしすぎたものかも知れません。それでも間違いなく刺激的な作品となるでしょう。

スターらしくないアーティスト、シンガーソングライターの歴史

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